春うらら
後輩以上恋人未満


「裏裏山で作ったんだ、お前にやる!」

そう言って小平太が差し出したのは小さな花冠だった。桃や白の名もない小さな花で作られたそれは作り主と酷く不釣り合いなもので、滝夜叉丸は少し面食らって曖昧な笑みを浮かべた。

「これを、七松先輩が?私に?」
「そうだぞ、滝に似合うと思ってな。休憩がてら作ったのだ。」

小平太が夜間訓練で裏裏山までランニングに行っているのは知っていたが、このような物を持って帰ってくるとは。滝夜叉丸は胸に温かいものが込み上げてくるのを感じながらそれを受け取った。

「七松先輩は器用ですね。意外です。」
「サラリと失礼なことを言うな…」
「でも、何故これを私に?金吾や四郎兵衛にやった方が喜ぶのでは?」

滝夜叉丸は小さな花冠を自分の頭に乗せる。花の良い香りがした。小平太はキョトンとした表情を浮かべると、何か考えるようにガシガシと頭を掻いた。そして暫く唸っていたかと思うと、いつもの翳りのない笑顔を浮かべて滝夜叉丸の肩を軽く叩いた。

「何故だろうな、お前の顔が一番に浮かんだのだ。お前なら喜んでくれるかと。私にも分からんがお前に作りたかった。」

滝夜叉丸の心臓が跳ねた。顔に熱が集まるのを感じて思わず視線を逸らす。そんな様子に気付く素振りもなく小平太は満足したようにひらりと滝夜叉丸に背を向けて長屋へと歩き出した。滝夜叉丸は慌ててその背に声を投げかける。

「あ、ありがとうございました!嬉しいです、大切にします!」

その言葉に小平太は振り向くことなく手を上げて応える。爽やかに吹く風が火照った頬を撫でて、滝夜叉丸は自分の中で何かが始まったのを感じていた。

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こへ滝は悲恋も好きですが恥ずかしくなっちゃう位の純愛も好きです。
まだお互いに恋だって自覚はしてないけど、ドキドキしてる、みたいな。はうあ…可愛い
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